夜勤の72時間ルールは、個人の上限ではありません

「夜勤は月72時間まで」という言い方が広まっていますが、これは 労働基準法の規定ではなく、診療報酬の入院基本料の施設基準です。しかも個人ではなく病棟の平均に対する基準です。ここを取り違えると、「自分は72時間を超えているから 違法だ」あるいは「72時間以内だから問題ない」という、どちらも正しくない 結論になります。

何が定められているのか

月平均夜勤時間数 = 夜勤従事者の延べ夜勤時間数 ÷ 夜勤従事者数

この平均を72時間以下にすることが、入院基本料を算定する条件の1つに なっています。守る主体は病院であって、看護師個人ではありません。

ここでいう「夜勤時間」は、各保険医療機関が定める22時から翌5時までを含む連続する16時間の時間帯の中で勤務した時間です。労働基準法の深夜時間帯(22時〜5時の 7時間)とは範囲が違うので、深夜割増の計算に使う時間とこの数字を混ぜないでください。この計算機が出している「22時〜5時の実労働時間」は割増賃金のための 数字なので、72時間と直接くらべるものではありません。

平均の分母から、2種類の人が抜かれている

この平均を計算するときの人数と時間には、次の人が含まれません

  • 夜勤専従者夜勤時間帯だけに従事する人。この人たちの夜勤時間は、そもそも平均の計算に入りません(別途、月144時間以内という基準があります)。
  • 月の夜勤時間数が16時間以下の人夜勤をほとんどしない人。分子からも分母からも外れます。

この構造が意味するのは、夜勤に入らない人が増えても、平均は下がらないということです。日勤のみの人や夜勤が月16時間以下の人は分母に入らないので、 病棟全体で夜勤をする人が減れば、残った人1人あたりの夜勤時間が増えて 平均は上がります。「夜勤ができる人が減っていて確保が課題」と 日本看護協会が毎年の調査で書いているのは、この分母の話です。

同協会の2025年の調査では、一般病棟に勤務する看護職員のうち 72時間を超える夜勤者の割合は33.9%、夜勤時間0時間の人は6.7%、 夜勤専従者は3.3%でした。3人に1人が72時間を超えていても、病棟の平均は基準内でありうる——これが「平均に対する基準」ということの意味です。

では、個人の夜勤回数に上限はあるのか

労働基準法に「夜勤は月◯回まで」という規定はありません。上限として 働くのは、労働時間そのものの規制(週40時間・1日8時間、変形労働時間制を 採る場合はその枠、36協定の限度時間)と、就業規則・労使協定で 病院が定めた回数です。

一方で、請求すれば深夜業を制限できる制度はあります。小学校就学前の子を 養育している人、要介護状態の家族を介護している人は、育児・介護休業法 19条・20条により、請求すれば原則として22時から5時までの労働を させられません。これは病院の裁量ではなく、法律で認められた請求権です(同居の家族が保育できる場合など、請求できない条件も定められています)。

育児・介護休業法19条・20条(e-Gov法令検索)

出どころ

  • 月平均夜勤時間数の定義、夜勤時間帯、夜勤専従者の144時間 —— 厚生労働省「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの 取扱いについて」(入院基本料の通則)
  • 72時間を超える夜勤者率33.9%、夜勤時間0時間の夜勤者率6.7%、 夜勤専従率3.3% —— 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」結果 図表14(2025年9月の一般病棟。回答2,104病院)

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